"鬼"上司と仮想現実の恋
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8時50分。

田中君が出勤してきた。

「おはよう。」

「おはよう。」

挨拶をして席に着く。

田中君も持ち物の準備を始めた。

「会社案内のパンフがなかった。」

田中君が、席を立って取りに行こうとするので、

「あ、私、さっきいっぱい取ってきたから、
あげるよ。」

と、私は5〜6部を取り出し、田中君に手渡した。

「サンキュ。」

と笑顔で受け取った田中君の顔が、一瞬で固まった。

「瀬名…
それ…!?」

田中君の視線に気づいた私は、慌てて左手を引っ込めた。

「あ、別に大した物じゃないの。
…そう! 男避け? みたいなもの。」

私の苦しい言い訳に田中君は呆れ顔だ。
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