"鬼"上司と仮想現実の恋
「どうぞ、お掛けください。」

父が促して、私と悠貴さんがソファーに座る。

「お父さん。」

私が口を開くと、悠貴さんが私を手で制して、

「瀬名さん、今日は、結婚のお許しを
いただきたくて参りました。
暁里さんを一生かけて幸せにしたいと思って
います。
どうか暁里さんと結婚させてください。」

と言った。

「前にも言ったと思いますが、暁里は
差し上げられません。」

父が言う。

「お父さん!」

私が怒って口を挟もうとすると、また、悠貴さんに止められた。

「もちろんです。
以前、お邪魔した時に、東京にいる間は
貸してくださるとおっしゃってましたよね。
ですから、この先、恋人としてではなく、
妻として無期限で暁里さんをお貸し
いただけませんか?」

悠貴さんは、にっこりと笑う。
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