"鬼"上司と仮想現実の恋
お父さんは、二の句が継げないでいた。

「暁里さんは、こちらで育って、こんなに
素敵な女性になりました。
ですから、それを取り上げるような事は
したくありません。
瀬名さんが愛情を注いで育ててくださった
暁里さんを無期限で私にお貸しいただけ
ませんか?」

悠貴さんが父に頭を下げた。

父はしばらく無言でいたが、

「佐久間さん、暁里を幸せにしてやって
ください。
よろしくお願いします。」

と言った。

「はい。
絶対に幸せにします。」

悠貴さんは、そう言って私の手を握った。

私は嬉しくて嬉しくて、気付けば頬を涙がつたっていた。

「あれ?
こんな、泣くつもりじゃなかったのに。」

慌ててティッシュを取ろうとしたが、その前に悠貴さんから、ハンカチが差し出された。

「ありがとう。」

私は悠貴さんのハンカチで涙を拭いた。
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