"鬼"上司と仮想現実の恋
「いいんですよ。
うちは、女の子3人だった時点で、
もう諦めてますから。
無理して継ぐ程の家でもありませんし。
逆に、佐久間さんのお父様の方が、跡取りと
して同じ姓を名乗って欲しいんじゃ
ありません?」

母が言う。

「そんな話は聞いた事もありませんが、父は
母との復縁を望んでいますから、もし、
俺たちの結婚前にそうなれば広瀬に戻る事も
あるのかもしれません。」

悠貴さんが言った。

「まあ、そんなおめでたいお話もあるの?」

母が身を乗り出す。

「いえ、母にその気は無いようです。
父が一方的に望んでいるだけです。」

悠貴さんが苦笑しながら、言った。

「離婚の原因は知りませんけど、そんな風に
思ってもらえるなんて、お母様もお幸せです
わね。」

母がうっとりと言う。

「何十年も添い遂げられてる瀬名さんの方が
お幸せだと思いますよ。
暁里がこんなに明るくて素直なのも、ご家庭が
円満だったからだと思いますし。」

悠貴さんが、また私を見て微笑む。

あ、また、きゅんきゅんする…
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