"鬼"上司と仮想現実の恋
桜は、パッと頬を染めて、こくんと頷いた。

「かわいい〜。
あの桜がこんなにかわいくなるなんて。
これは主任も惚れるね〜。
ギャップ萌えってやつ?」

私は桜の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「暁里さん、冷やかさないでくださいよ〜。」

桜がじとっと上目遣いで抗議するので、

「ごめん、ごめん。」

と謝った。

「じゃあ、百合ちゃんは?」

「田中さんと映画に行って、お食事して
帰ってきました。
田中さん、私が、暁里さんに無理矢理
来させられてると思ってたみたいで、何度も
謝るから、思わず、違いますって言ったら、
なんだか告白したみたいになっちゃって…」

そこで百合ちゃんは黙ってしまった。

「うん。
百合ちゃんの気持ちは伝わったんだよね?
それで?」

私が先を促すと、

「まだ、暁里さんの事、完全に忘れたわけじゃ
ないから、このまま付き合うのは私に失礼
だから…って…」

百合ちゃんの目がうるうるし始めた。
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