"鬼"上司と仮想現実の恋
「それは、知らなかったなぁ。」

「なんで自分を抑える必要があったんです?
別に不倫じゃないし、抑えなくてもいいんじゃ
ありません?」

と桜。

「だって、普通に考えてよ。
好きになっても、私なんか振られるでしょ?
見た目が良くて、社長の息子で、上司で、
鬼"なんだよ?
振られて傷付かないようにっていう、
言ってみれば、自己防衛だよ。」

私が言うと、

「じゃあ、いつ自覚したんです?」

と桜の尋問は終わらない。

「んー、それはね〜、クマさんに見事に
誘導されたんだと思う。」

「え? クマさんって、部長ですよね?」

「うん。
悠貴さんが、他人のふりして、いろいろね?」

と悠貴さんを下から覗き込んだ。

「くくっ
それは………ねぇ、やっぱり使えるものは
フルに使わないと。
俺はどんな手を使っても暁里を手に
入れたかったから。」
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