"鬼"上司と仮想現実の恋
「暁里、勝手な事して、ごめん。
もしかして、怒った?」

悠貴さんが小さな声で聞いてくる。

私は、まだ何も言えず、ただ首を横に振った。


披露宴終盤。
私は両親に感謝の手紙を読み上げる。

「私は今日、大好きな悠貴さんのお嫁さんに
なりました。

これは、長い間、お父さん、お母さんが愛情
豊かに育ててくれたおかげで、悠貴さんに
見初めて貰える娘になれた結果だと思います。

お父さん、お母さんは、双子が生まれて、
子育てが大変だった時でも、私にも溢れん
ばかりの愛情を注いでくれました。

私は、2人から注いでもらった愛情を、
これから私たちが作る新しい家族に注いで
いきたいと思います。

今日、私は、悠貴さんの元へ嫁ぎますが、
2人の娘である事は変わりません。

私は、瀬名家の娘であった事を誇りに、
佐久間家の嫁として、精一杯生きていきます。

お父さん、お母さん、26年間、大切に育てて
くださってありがとうございました。

いつまでも元気な私の理想の夫婦でいて
くださいね。

─── 佐久間 暁里 」

私は少し鼻声になりながらも、最後まで涙をこぼす事なく、なんとか手紙を読み終えた。

だけど、目の前で泣く父の姿を見て、我慢していた涙が溢れてくる。

隣の悠貴さんにハンカチを渡され、そっと目元を抑えた。
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