艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
どこまでが天然で、どこからが計算か。
どこまでが邪気がなく、どこからがわざとなのか。


だけどこれが、私が選んだ人なのだと覚悟を決めて、ふたたび彼が差し出すケーキを口に入れる。
すると三度目は、彼が自分の口に運びぱくりと含んだ。私はまた、喉がつまりそうになり慌てて飲み物を探した。


かくして私は、甘い感情の伴わないこの政略結婚に踏み出すことになった。
決して軽い気持ちだったわけではない。ただ、やはり私は知らなかった。


恋というものを、知らなかったのだ。


人を愛するということも。
愛されるということも。

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