艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ここで着替えたのだから当然のようにこの部屋に戻ってきてしまったけれど、客室ならベッドがあって当然で、もしや今夜ここに泊まるつもりなのかと思えば嫌でも意識してしまう。
いや、明日は仕事だ。今日は何がなんでも帰してもらおう。
そうしよう。
いくらなんでも、婚約を受け入れてすぐその日のうちに、そんな関係まで受け入れなくてもいいはずだ。
葛城さんだって、花月庵の味や顧客を最大限に利用するなら父や兄の協力は必要不可欠なはずだし、多分そのための架け橋が私なのだ。私が嫌だと言えばこれ以上強引なことはできないはず。
気合を入れ、静かに扉を開けてリビングを覗くと、彼がソファに座ってスマホを弄っているところだった。
私に気が付き、優しく微笑む。
「何か飲む? コーヒーは淹れてあるけど」
「それでいいです」
葛城さんはふたり掛けのソファの片側半分に座っていて、私の分のコーヒーはその反対側に座るようにとローテーブルの上に置かれている。