艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
柳楽堂のことがあるから、とにかく花月庵と葛城が円満に業務提携することをできるだけアピールしておきたい、というのが葛城さんの要望だった。


そのために今回のパーティと、普段からパートナー同伴の席などがあればあえて私を連れて行きたいので、早めに仕事を辞めてサポートして欲しいということ。


はっきり言って、とても婚約の為の話とは思えない、ビジネスライクな会話が淡々と進んだ。


仕事は、代わりの販売員がすぐに見つかれば研修などの期間を経てひと月くらいで退職することは可能だ。少し寂しいけれど、この話を受けると決めた時に退職は覚悟していた。


後は秋に開かれる茶会で花月庵の上生菓子が主菓子として使われるのだが。


「その時には婚約を正式にお披露目できるようにしたいと思ってる」

「正式にはまずうちの父を打ち負かさないといけませんよ」


まずというより、あの人が唯一で絶対の鉄壁防御だ。その防御は頑固親父ゆえ中々真直ぐ伝わらないが、私を想うがゆえなのだ。……多分。


彼も今まで父と何度か相対してそのことはよくわかっているはずなのに、なんでもないことのようにさらりと言った。


「藍さんのお父さんの説得には、俺が行くよ。だから君は心配しなくていい」
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