艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「いや……無理ですって。葛城さんが行ったら逆効果ですよ」


兄が協力してくれるとしたって、あの父がそう簡単に許すはずがない。
だけど、彼にとってそんなことは大した問題でもないらしい。


「昔から、決まってるものじゃないの?」

「え?」

「“娘さんを僕にください”と言って一度は父親に殴られる。結婚のための通過儀礼だしね」


言いながら笑った彼は、少し悪戯な、それでいて大人の空気を漂わせる。なぜそんな風に感じたのか。それは多分、殴られることもいとわないという、揺るがない意思がある様に見えたからだ。


彼が、ぺら、ぺらと紙をめくる、その横顔をじっと見つめる。
彼の手にあるのは、さっきまで私に見せてくれていた花月庵の過去のデータだ。

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