艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「甘いものはふだんから食べてるからいいんです」
「まあ、実家が和菓子屋だもんな」
「それもあるけど、昔から祖母がよく作ってくれて、今は私もお菓子作りが趣味なので」
そう言うと、彼はちょっと目を見開いた後。
ゆっくりと、私の全身に視線を移し巡らせ言った。
「……その割に細いね」
「ちょっと。変な目でみないでくださいっ」
「いや、君こそいちいち人を変態みたいな目で見ないでくれる?」
気が付けば、いつのまにかぽんぽんと会話のラリーが成立する。そのやりとりがとても小気味よく、こんな風に男の人の会話が弾む経験が今までなかった。
葛城さんが、聞き上手なのか話上手なのか、そうしているうちに少しずつ警戒は緩む。
「次の休みはいつ?」
そして、今日は何もしないと言った通り、デートから少しずつ進めてくれる様子に、ほっとした。
また別の日に食事に行こう、と提案してくれて、私はスマホが今手元にないことに気づく。
寝室に着物と一緒にバッグを置いたままだった。