艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

ふたたび彼の唇が触れ、今度は濡れた、唇よりも柔らかなものが私の隙間にちらりと触れたのだ。


それが舌だと気付いた瞬間、私の手は彼の手を振り払い。
ぱああん!
と乾いた音をたてていた。


てのひらがじんじんする。
目の前には、平手を食らってぽかんと目を見開いている葛城さん。


本当に、ほんっとうに、心底驚いた顔をしているその人は、殴られた頬にゆっくりと手をやり「いて」と呟いた。


その時やっと、息が止まっていたことに気が付き大きく空気を吸い込む。


「は、はじっ」


初めてだったのに、と言おうとして口を噤む。
この年になってキスをしたこともないと思われるのも悔しい。



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