艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
葛城さんの驚いた顔が、『たかがキスで』と言っているような気がして顔が熱くなった。
だけど、別に大事にとってたとかそんなわけではないけれど。


「ふ、ふいうちっ……」


不意打ちで、一瞬でファーストキスをされてしまうなんてひどい。しかし結局この苦情も、葛城さんには伝わらない。
彼にとったらきっと、『たかがキス』に違いない。


そう思ったらもうこれ以上言葉が出て来なかった。


「か、帰ります!」

「え。あ、藍さん!」


彼の返事を聞く前にソファから立ち上がり、私が逃げ込んだ先は寝室だ。だってそこにバッグがあるのだから仕方がない。


急いでバッグを掴み、またドアへ引き返す。葛城さんが呆然としてくれている間に、あのリビングを再び通らなければ帰れない、わけで。


「きゃあっ!」

「うわっ」


寝室のドアをあければ、そこには追いかけていた葛城さんがいて、思わずその鼻先でバタンと閉めてしまった。

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