艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「す、すみませんでした。叩いてしまって」


二十四にもなって、まだキスもしたことないなんてきっと葛城さんも予想外だっただろう。


だって、仕方ないではないか。
キスなんて好きでもない人とするはずはないし、そんな人が今まで現れなかったのだからつまりそういうことだ。


「いや。こっちこそ急ぎすぎた。悪かったよ」

「……ほんとに、急だったと思ってくれてますか」


葛城さんにしたら、ほんとに互いを知るための第一歩、程度だったのじゃないだろうか。
そう思い恐る恐る聞くと、微妙な間が空いた。


「……いや、うん」

「なんですか、今の間。もしかして、笑ってますか」

「……違うよ、そうじゃなくて。……くくっ」


ついに、扉の向こうで葛城さんの笑い声がした。声を押し殺そうとして失敗したらしい。

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