艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「わっ……笑ったっ」
恥ずかしさで私の方は泣きそうになる。
それを察知したのか、彼はあわてて言った。
「ごめん、いや。馬鹿にしてるわけじゃないよ」
そう言いながらも、彼の言葉は一度途切れ、また「くくく」笑いを挟む。
「いや、ほんとに、ははっ……普段あんなに毅然としてるのに」
「うるさいです、もう……」
案外笑い上戸らしい彼を止めることは諦めて、むくれていると。
ぽそっと笑いを堪えながらの呟きが聞こえた。
扉越しなのもあり小さなその声は聞き取りづらかった。
「今なんか悪口言いました?」
「違うよ、なんで」
散々笑ってようやく落ち着いたのか、大きく深呼吸をする音が聞こえる。
「疲れただろうし、その部屋で少し休んでからどこかドライブでもいこう。軽く何か食べに行ってもいいし、そのまま帰ってもいい」
「……はい」
「俺は君の許可がなければ入らない。リビングにいるよ」