艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
そう言って、扉の向こうから遠ざかって行ったのが足音でわかった。


私はどっと疲れが押し寄せ、ふらふらとドアから離れると目の前のベッドにぽふんと横になった。


確かにクタクタだ。
はあ、とため息をつき目を閉じると。


まざまざと思い出されたのはさっきの一瞬のキスで、慌てて目を開ける。


触れた唇は、本当に優しく掠めるほどで。
だけど、唇を舐めた舌先は一瞬なのに熱く感じた。


ばっ、と勢いよくうつぶせになり、顔をベッドにうずめる。
そして声を出さずにしばらく悶絶した。


間近に見た、少し熱っぽく感じた彼の瞳まで鮮明に思い出せてしまい、目を閉じるたびにこれではしばらく眠ることもできそうにない。


そう思ったけれど。
そのあと、ひとり身悶えながらもいつのまにか眠ってしまって、なんと朝まで起きなかったのである。


リビングで私を待ち惚けた葛城さんはソファで一晩眠ったらしく、私を見て「君は、やっぱり肝が据わってるよ」と少し呆れた声で笑ったのだった。

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