艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「ど、どうしてここに」
「俺も早めに終わったから食事にでも行こうかと」
「だったら携帯に連絡してくれたら」
「制服姿も見たかった。やっぱり可愛いね」
困惑して、言葉に詰まる。かあ、と頬が熱くなった。
可愛い、なんて言ったって、ブラウスにベストとタイトスカートという、事務員のような制服だ。それに黒の三角巾を頭につけていて、恥ずかしい。だから来ないでくれと言っていたのに。
「望月さん、どうぞ上がって? 店長ももうすぐ休憩から戻るし」
そう言って、派遣社員の女性がレジカウンターの下にあった私物のバッグを持ってきてくれた。
「……そうですか? すみません」
受け取って、頭を下げる。確かにもう定時だし、派遣で販売に慣れてる方なので問題はないだろう。
頭を下げると、葛城さんの背中を押すようにして急いで売場から離れた。