艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「そんなに嫌がらなくても」
「嫌っていうか恥ずかしいんですってば……葛城さん目立つし」
ほんっとに、自覚して欲しい。もうじき退職ではあるけれど、あまり目立ったことはしたくない。
葛城さんは、驚くほどにまめな人だった。
気を遣ってくれているのかもしれないけれど、会えない日でもとにかく一度は電話をくれた。
時間が合えば、こうして食事に誘ってくれる。
休みを合わせて会ったのは、まだ一度だけだ。
ドライブに行って、都会から離れた場所でランチを食べ散策してまだ明るいうちに帰るという、健全極まりないデートだったが。
間違いなく私に合わせてくれている。
そして、彼とは何か会話のテンポが小気味良くて、一緒に居て話に困ることはほとんどなかった。