艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「あ。元に戻っちゃった」
我に返った私に気づき、残念そうに笑う。ということは、キスに溶かされていた私のことも当然わかっていたわけだ。気づくと、かあっと顔中に熱が集まって、涙が出そうになった。
「も、もうやめる! 降ろして」
「わかったわかった。ここでストップだからもう少し」
膝の上でじたばたと足掻く私を、宥めはしても暫く逃がしてはくれなかった。
軽いキスを顔中に繰り返し、抱きしめてくれる体温に、私は自分がとても愛されているような、そんな勘違いをしはじめていた。
「藍さんに好きになってもらえるよう、努力するよ。……この先にお許しが出るように」
そう言った葛城さんの目は、とても優しいものだったけれど。
私は、胸の奥に小さなトゲが刺さったような痛みを感じ、その時やっと、勘違いに気が付く。