艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
寂しさの理由
***


葛城さんは、仕事以外には全く無頓着な人だった。
初めて彼の部屋を訪れて、二度目は一週間後だったろうか。巻き戻したかのように全く同じ状態で、その後必然的に訪問回数は増えた。


会う回数が増えれば、少しずつ彼の現状もわかってくる。
とにかく、彼は忙しい。家で食事をしないのは、仕事が終わる時間が夕食の時間よりも遅いからだ。


遅くなるとわかっていて、無理に彼の為に食事を作って待ったりすれば、余計に負担になりそうでそこは遠慮している。


だって、夜遅くに帰ると言えば彼は必ず送ってくれるし、料理の作り置きなんかしてもその後片付けの負担を増やすことになる。外食は合理的な彼の生活の一部なのだ。
そこをサポートするなら、一緒に住む他ない。


だが、今夜は彼の帰りを待っていた。明日は和菓子ブランド『葛城』の起ち上げ一周年のレセプションパーティがあり、それに出席する予定だ。朝も早い。だというのに、彼は今夜も遅く、明日も私を迎えに来ると言って聞かないから、先回りすることにしたのだ。


「おかえりなさい。遅かったですね」

「藍さん、ほんとに来たの」

「私の家に寄る手間が省けるかと思って」


玄関先で出迎えた彼は、少しお酒の匂いがした。

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