艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
婚約者として頼られはしなくとも、迷惑はかけないようにしなければ。
そう思ったのだけれど、葛城さんはなぜか少し、残念なものを見るような目をしている。


「もう、少し」

「はい?」

「傍にいてくれないと寂しいとか、心細いとか甘えてくれてもいいのに」

「えええ。そんなキャラじゃないですし」


私が?
想像しただけで、なんかこそばいというか、気持ち悪いというか。


頬をひきつらせて遠慮させてもらうと、彼が腰を屈めて耳のそばで囁いた。


「昨夜みたいに。可愛かった」


昨夜。
確かに、あんな風に私から背中に手を回し抱きついたのは、はじめてで。


「あ、あれは、別に甘えたわけじゃ」


甘えるってああいうことなの?
ただ、あの時は何か衝動にかられて、自然としてしまっただけだ。

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