艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
じっと、彼の目を見つめ返した。
彼がずっと私に誠実に接してくれているのは、愛情の代わりに信頼を築こうとしてくれているからだ。
しばらく考えたあと、深く頷く。
「信じてます。花月庵を守ってくれるって」
信じることが、今私に出来ることだ。
花月庵にとっても、芽生えたばかりの恋心にとっても。
今はまだ一方通行の想いでも、この関係を手離したくはなかった。
信頼がいつか、愛情に変わる日がくるかもしれないから。
心に決めて微笑んだ。
すると彼の手が私の頬を撫で、不意に額にキスをされた。
「可愛い妻の大切なものなら、必ず守るよ」
互いの利益のために、きっと彼は良い夫になってくれるだろう。
だから私も、可愛い妻にならなければ。
嬉しいのか寂しいのか、よくわからない複雑な感情を抱えていたら、彼もなぜか複雑な表情をしていた。