艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「やっぱり、ピアスは気に入ってくれてるんだ」
ちら、と彼を横目で見てから、コーヒーカップを手に取る。
「はい」
「指輪は外しちゃってるけど」
指輪は高価過ぎて、という理由ではもうなくなった。
ピアスだからつけているわけでもない。
このピアスは、多分、葛城の社長としてではなく。
葛城圭、個人で、花月庵は関係ないただの望月藍にプレゼントしてくれたもののように感じられるからだ。
損益の関係ない、意図もない、誠意でもない。
あの公園で、ハンドメイド作品に夢中になる私に、何気なく買ってくれた。
「喜んでくれて良かった」
「はい。好きです」
葛城さんが、好きです。
こく、とコーヒーをひとくち含んで飲み込み、今度はちゃんと彼の方を見て言った。
「今夜、泊まってもいいですか?」