艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
どうして私は、されるがままに隠れてしまったのだろう。
フレンチレストランに繋がる通路から角を曲がり、少し離れて大きな柱の影に入った。


ふわりとグリーンが薫る。彼の香水だ。


「あの……さっきの縁談の話」

「はい」

「本当に? 私と?」


信じられなかった。茶会で顔を見たことがある、それだけの私にどうして彼が縁談を申し込むのか。
考えられることはひとつだ。


「……政略結婚ですか」

「その通りです。花月庵の味と顧客が欲しいと言ったところ、ふざけるなと怒られました」

「当たり前です。何言ってんですか」


ぎょっとした。よくもまあ、馬鹿正直に。

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