艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
うちが一番大事に守ってきたそのふたつを差し出して、その上婚姻関係まで結ばなければいけないのだ。


政略結婚なら、双方に利益がなければ成立するわけがないではないか。


じっと訝しむ視線の先で、彼の三日月型の目は動揺するでもなく顔色も変えない。
その穏やかさに、騙された。


ゆっくりと、彼が私の背後の柱に手をつく。柱との間に挟まれ、逃げ場がないと気が付いたその時。


「ですが、花月庵をまもるためには、あなたはそうしなければいけない」


彼が笑顔で毒を吐いた。

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