艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
葛城さんの横顔を見ていると、その向こうにある窓の外の景色がゆるりと止まる。
赤信号だ。


ハンドルに片手を置いたままこちらを見る目は、怒っているというよりは拗ねているのかもしれない。
初めて見る表情で、私にはそれもまた、嬉しかった。


「全然、思いもしませんでしたか?」

「そりゃ。だって、実家に君から連絡をするのは待ってって言ったのを、ずっと守ってくれてたからね。まさか今になって」

「ごめんなさい。父に問答無用で呼ばれてしまって」

「今日、やっと進展があったと藍さんに報告できると思ってたんだけど……かっこつかないなあ」


あーあ、と肩を竦めて、そこでやっと彼は笑った。


「そんなことないです。仕事の話してて父から一歩も引かない葛城さん、かっこよかったし」


いつもなら、簡単には素直に言えないことも、今はなぜか、抵抗なくするりと言葉が出てくれる。


「……可愛いって言ってくれたのも嬉しかった」

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