艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
砂糖菓子の夜
その日、葛城さんは本当に早く帰ってきてくれた。
ふたりで私が作った夕食を食べて、思っていたよりかしこまった話の始まり方はしなかった。


夕食後に、ソファで並んでお茶と今日買って帰った和菓子を食べて、最初は笑い話ばかりだった。


「うちの暖簾はくぐらせないって、その言葉通りだったよ最初は。ほんとに店の前で追い返されて、俺一応筆頭株主なんだけどって。君のお父さんには全く通じないから笑ったよ」


弱った、と眉尻を下げて笑う。
私が彼の手を取った翌日から、彼は父のもとに1日も欠かさず通い続けていたらしい。


「最初は、迷惑にならない時間帯を考えて夕方か昼過ぎを狙って行ってたけど、時間決めて行くと逃げられるんだよ。そのうちランダムに行くようになったんだ。それでも中々捕まらないし」

「父に無断で私が動き出したから余計に意固地になったんですよねきっと。……寧ろ葛城さんにとったらマイナスだったんじゃないんですか?」


葛城さんには悪いけれど、ふたりの攻防戦を思い浮かべるとおかしくてしかたない。つい笑いながらそう尋ねたが。
決して楽なことでもなかっただろう
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