艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~


「そんな……目立っては居なかったと思うけど」


どちらかというと、目立つ容姿なのは彼の方だ。
ただ、私は祖母や祖母の知人など年配の人のお話相手をしていることが多かった。


だから周りに余り目を向けてはいなかったけれど、まさかそんなに前から彼に見られていたなんて。


「目立つよ。着物の着こなしも所作も美しくて、若い女性の中でも一番に視線を集めてた」


ああ、だから彼は何かと私に着物を着せたがったのか、と思い出せば頬や耳が熱くなる。
嬉しいけれど、次着物を着るときに意識してしまいそうだ。


「それだけじゃない。お祖母さんと一緒にいた時間が長いからかな? 自分よりもずっと年上の相手にも物怖じせずに会話をして、気遣いも自然で見ていて気持ちがいい。茶会があるたび、なんとなく君を探すことが多かったよ」
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