艶恋婚～御曹司と政略結婚いたします～
その文字をつい二度も目で追ってしまい、頭に残ってしまった状態でリビングに葛城さんが入ってきた。


「ただいま」

「お、かえりなさい」


なんだか、悪いことをしていたような気持ちになりながら彼に駆け寄る。


「疲れたよ。藍の顔見たらほっとする」


くしゃりと崩れた表情に、嬉しくなって抱えていたもやもやが少し薄くなった。
そう、こうして目の前に彼がいれば、何も憂いはないのだけれど。


スーツの上着とビジネスバッグを預かって、軽くキスを交わすと彼は先にシャワーを浴びに浴室へと向かった。


相変わらず、彼は忙しい。
ビジネスバッグをパソコンデスクの近くに置き、上着を寝室のクローゼットにかけてため息を吐く。


彼との神戸観光の日のことを思い出し、次にあの時のようにふたりでゆっくりできるのはいつになるだろうとせつなくなった。
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