艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~


慌ただしくもあったけど、楽しかった。異人館の散策も出来たし、夕方にはロープウェイで山上まで上がり景色も楽しめた。
それに嬉しかったのは、偶然あった葛城さんの知人に私を婚約者だと紹介してくれたことだ。


ふたりで朝から異人館のはずれにあるレストランで、朝食をいただいてサロンで紅茶を飲んでいた時だった。
初めて彼のパートナーとして出席したパーティで会った、大学の時の先輩だと言っていた人だ。


『葛城が僕より先に結婚するとは思わなかったな』


彼は柔らかく微笑んで、私にも丁寧に挨拶をしてくれた。


『僕も考えているんだけどね。彼女が仕事に夢中で中々その気になってくれないんだよ』
と苦笑いをしたその人は、ずいぶんとその女性に手を焼いているようだった。


葛城さんと結婚を話題にして笑い合っている間、私は何か気恥ずかしい思いをさせられていたのだが。


その後、ふたりで仕事の話をしている時はなぜか厳しい顔をしていて、怖くて口を挟めなかった。

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