艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
もやもやの原因が、わかった気がする。
絵里さんの方が、たくさん彼の顔を知っているだろうからだ。
「藍? どうかした?」
クローゼットの前でぼんやりとしている間に、葛城さんがシャワーを終えていた。
「なんでもないです。何か食べますか? 飲み物でもいれましょうか」
なんでもないことはないのだけれど。
それを、どう葛城さんに伝えていいものか、そもそも伝えるべきことなのか判断できずに私は忘れることにした。
『……そういう人って、はぐらかしたりするのも上手そう』
確かに、彼は上手だけれど。
だって、私たちは結婚するのだ。これ以上確かなことなんてないはずだ。