艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「あんまり近寄ると移る」
「大丈夫ですよ少しくらい。変な心配してないで、早く着替えて寝てください」
どこか動作のゆったりとした彼を手伝ってどうにかベッドに寝かせると、彼はじきに焦点の合わない目になり、やがて眼を閉じた。
「……頭、働くわけないよ」
目を閉じて動かなくなった彼の脇に体温計を差し込んで、熱を測ってみれば39度を超えている。
薬は飲んだのだろうか。
お医者さんはなんて言ってたのだろう、インフルエンザの季節ではないけれど。
情報が足らなすぎるが、せっかく眠った彼を起こすのも忍びない。とにかく家でできることをしなければと、手製でスポーツドリンクを作ろうと寝室を出た直後だった。
ガチャ、とドアノブが一度回される音に驚いて玄関を見る。
鍵はさっき、私が入った後に閉めたから開くことはない。
すぐに、ピンポンとインターフォンが鳴った。