艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
話している間無表情だったその綺麗な顔は、振り向いたその瞬間、うっすらと笑みを浮かべていた。
長いストレートの黒髪は、後頭部でひとつに結わえられていたけれど、艶のある美しいものだ。


エレベーターホールへと曲がった瞬間、さらりと揺れた。
清楚で、あの黒髪を結い上げれば和服の似合いそうな人だと思った瞬間、胸の奥が焼けるような感覚に襲われ慌てて頭を振る。


何をしてるんだろう。
早く、葛城さんのとこに戻らなきゃ。


もらったビニール袋を提げて、寝室へと急ぐ。
彼は静かに眠っていた。


さっきのインターフォンの音には気付かなかったらしい。
ほっとして、彼の枕元に近付く。


ビニール袋の中から冷却シートを取り出し薄いビニールを剥がすと、彼の額にかかった前髪を片方の手で避けた。

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