艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
事務作業って言ったのは……確かに間違いではないけれど。
こういう場合、普通に秘書って言わない?


私の思い過ごし?
それともわざと言わなかった?


コンシェルジュさんが彼女の顔を覚えているのは本当?
どうして?


できることはすべてやって、することがなくなれば嫌でも考えてしまう。そんな自分が嫌だった。
寝室に入り、葛城さんの寝顔を覗き込む。


浅い息遣いが聞こえてきて、目はきつく閉じられたまま眉は苦し気に寄せられていた。


「葛城さん、お水飲めますか?」


額に触れると汗をぐっしょり掻いていて、やはり熱い。
心配になって声をかければ、うっすらと目を開けて頷いた。


少しだけ身体を起こしてもらい、彼の口元に近づけたのは、経口補給水ではなく私がさっき作ったばかりのスポーツドリンクだった。


彼女が持ってきたものを、彼に飲ませるのが嫌だった。子供染みた嫉妬かもしれないけれど、どうしても嫌だった。

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