艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「藍?」
「……今日はお休みするって約束してくださるなら、お渡しします」
ぎゅっとスマホを握ったままそういうと、彼は困ったように眉尻を下げる。
「心配かけたけど、もう大丈夫だから。熱も下がったし」
「解熱剤のおかげだってわかってるはずです。そんなので会社行っても周囲に移すだけですから」
「部屋にこもって仕事するよ。今日はどうしても行かないと」
「そんなんで仕事になるとは思えませんっ」
葛城さんの身体を心配しているのが一番の理由だ。
だけど、そこに混じった不純物が確かにある。
仕事の面では、私は口出し出来ない、彼が普段どんな風に仕事をしているのかもわからない。
だけど家での、彼の体調管理には私が口出ししてもいいはずだという、絵里さんへの対抗心もあった。
そんな自分に気が付いて、情けなくなって唇を噛みしめ俯いた。それでも、スマホは渡さなかった。
不純かもしれないけれど、無理して倒れてほしくない。
すると、ふぅ、とため息が聞こえた。