艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
その日一日、彼はベッド上で電話をしたりパソコンで何かやりとりしながら仕事をして、その間私は消化の良い食事を用意したり水を運んだりと彼の世話に集中した。


電話の相手は話し方から取引先のようだったり、自社だったり。
自社の場合は秘書の御手洗さんだろう、と思うのだが……なんだか、葛城さんの話し方が思っていたのと違った。


電話の時は寝室に近寄らないようにしていたのだが、廊下を通りがかったときにちらりと聞こえてしまった。


「御手洗は頼んだことをしてくれればいい。その件は俺から折り返しておく」


事務的以上に淡々とした声で、相手の返事も聞かずにぷつっと電話を切って放り出し、またパソコンに向かう。


……幼馴染、というにはやっぱりそれほど仲良くないのかな?


だけど、昨日の彼女の様子は、ただの秘書という感じではなかったし。
頭の中で、いくつかの疑問点が……符合しない何かが気になった。


「あの、これ」


御手洗さんが持ってきてくれたグレープフルーツを切って、グラニュー糖と少しの洋酒を加えたものをガラスの器に入れて、ベッドのサイドテーブルの上に置く。


「さっぱりして食べやすいと思います。御手洗さんが昨日、グレープフルーツを差し入れてくれて」


そう言うと、パソコン画面から顔を上げた。


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