艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「御手洗が?」
「うん」
彼を見て微笑むと、彼の方は少し訝しむような表情だった。
その表情の意味がわからなくて、私も首を傾げて言葉を繋げる。
「ここまで送ってもらったんですよね? そのあと冷えピタとか色々差し入れてくれました。後で、お礼を言っておいてください。それより、また熱が上がってませんか?」
あんまり、御手洗さんの話を今は出したくはなかったけれど、差し入れをしてくれたことはちゃんと伝えておかなければと、出した話題だった。
できるだけ平常心でそう言って話を逸らし、彼の額に触れる。
「ほら! やっぱり上がってます、一回寝てください!」
彼の側からノートパソコンを片付けて、無理やり寝かせると熱で頭が痛むのか眉間にしわを寄せていた。
「ほんとに寝てください。ちょっとだけ買い物に行きますけど」
「どこに?」
「近所のスーパーです。夜はおうどんくらいなら食べられそうかと思って」
「行かなくていいよ。おかゆがいい。昨日の美味かった」
「そうですか?」
問い返したが、もう返事はなく彼は私の手を掴み目を閉じた。