艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
その寝顔を見ながら、しばらく考えていた。
彼はもしかして、私がこんなことを気にするとも思ってないのだろうか。


彼にとって、彼女が本当に友人や幼馴染以上のものではないから?
だって、普通なら焦りそうな気がするのに、彼は訝しむばかりでそんな様子も見せないし……それに『絵里』と呼ばなかった。


「あれ? 御手洗さんイコール絵里さんだよね?」


私が勝手にそう思い込んだだけだろうか、と考え直したが、彼女が親し気に『圭くん』と呼んだのだからやっぱりそれは間違いない。


今は名字で呼んでいて、あの日お母さんと話していた時はお母さんに合わせてそうしたのかもしれない。
やっぱり、彼にとっては意識する相手ではないのかな?


だとしたらあれこれ詮索してしまったら私が恥ずかしい。考えていると、眉間に皺が寄っていく。


彼女が絵里さんだろうとそうでなかろうと、女の勘が訴えている。


彼女は、葛城さんに気がある。
振り向いた時の笑顔が、明らかに私に向かい挑戦的なものだった。


葛城さんは気付いていないのかもしれない。


「私が秘書やりたいな」


ぽそ、と何気に呟いてしまった。
一応秘書士の資格は持っている。
いくら仕事とはいえ、彼に気持ちがある女性が側にいるのは嫌だった。


そのつぶやきに、ふっと笑った気配がして驚いた。


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