艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「か、葛城さん……」
「ん?」
「電話、鳴ってます」
構わずキスを続けようとする彼の唇を避けてそう言った。だが、彼は名残惜しそうに唇を啄んでいてそのうちに切れてしまった。
「もう、見た方がいいですよ、大事な電話だったら」
「……わかった」
渋々といった様子で、私を片腕に抱いたままローテーブルに置きっぱなしだったスマホに手を伸ばす。
そして私のすぐ目の前で、スマホの操作をし始めた。いつもなら見てはいけないような気がして目を逸らすのだが、友人たちのグループチャットの会話が頭の中に残っていたのかもしれない。
ぴぴぴ、とパスワードを押す彼の指を目で追ってしまった。
っていうか、待って、早くて確証は持てないけれど、私の名前と誕生日だったような。
いやまさか、会社経営者ともあろう人がそんな単純なパスワードなわけが……と眉を潜めてみていれば、次の瞬間目に飛び込んできた待ち受け画像に、釘付けになった。