艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ただ、仕事をしていた頃と違って時間が在り過ぎて、持て余しているのもある。
「あの……この間の、冗談じゃなく本気でって駄目ですか?」
「この間?」
翌朝、出勤する彼を送り出すとき、ちらりと聞いてみた。
「葛城さんの、秘書やりたいってやつです」
すると彼は瞠目した後、困ったように眉尻を下げた。
「本当に秘書でってことじゃないんです。でも実際時間持て余しちゃって働きたいし……それなら葛城さんの近くで働きたいなって思っただけなんですけど」
「働くなら秘書士の資格も持ってるしね、ありだと思うよ」
「えっ!」
思いがけず色よい返事だと思い、ぱっと顔を上げたけれど。やっぱり、表情はイエスとは言っていなかった。