艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
だから、私がしっかりすれば、大丈夫だと勝手に、思って。
「な……なんで、そんな」
「あー、どうかなちゃんと連れてくるかな……それとも絵里の方が大事かな」
恐怖で力が入らない。手の中で、葛城さんの着信が続いている。
一度切れて、またすぐに鳴りだした。明らかに彼も異変に気付いている。
葛城さんを疑うように、また私を煽るセリフに、じわりと涙が滲み胸の中を真っ黒な何かに塗りつぶされていくようで。声が震えてしまう。
「……か、葛城さんを呼び出すのに私を餌にしたんですか」
「そうそう。それが終わったら離してあげるから」
「葛城さんに、何を……」
どうしよう。
私のせいで、葛城さんが、危ない目に合ってしまう。