艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
私を捕まえようとしたのか、背中から軽い衝撃があってその拍子に片足を捻った。
高いヒールなんて、やっぱりやめておけば良かった。


捻った足の方へ、横に流れていく身体。
階段の方だった。


身体が重力を感じない。
目だけはしっかり、葛城さんを見ていた。


険しい表情で私を追いかけて階段へと、身体を乗り出す。


ダメだよ、葛城さんまで落ちてしまう。


けれど、彼は構わず私の手首をしっかりと掴んだ。その瞬間、こんな状況だというのに確かに彼は穏やかに微笑んだ。


一瞬の微笑。
いつもの余裕たっぷりの、最初は胡散臭いと思ってしまった、今は大好きで見るだけで安心できてしまう笑顔。


直後、思い切り腕を引かれてがくんと身体が前のめりになった。
階段上で肘と膝をぶつけながら倒れ込む。

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