艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

ぽかんと安達さんを見上げる。
彼は、私の様子に一度眉を寄せて何かを考え、ため息を吐いた。


「御手洗は確かに秘書室におりましたが、当たり障りない事務作業をしていただけです」

「え、でも。葛城さんが倒れた時に、御手洗さんが差し入れを持って戻ってきて……コンシェルジュさんも顔を知ってるから入れてもらえたって」


思いも寄らない事実に、呆けてしまって疑問がそのまま口から溢れる。
すると忌々しげに、安達さんは舌打ちをした。


「……あの女」

「えっ?」

「いえ。彼女が、柳川と揉めて例の事件の証拠を持って社長のマンションに押し掛け助けを求めたんです。それを、コンシェルジュは覚えていたかもしれません」

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