艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
御手洗さんは、昔からずっと関西の柳楽堂の和菓子工場で事務方として働いており、柳川さんとは長いお付き合いだったそうだ。
葛城さんとは学生時代から何年も疎遠になっていて、それが春頃突然御手洗さんが訪ねてきたらしい。柳楽堂の食品偽装の証拠となるデータを持って。


「社長は古くからの友人として、告発したいという彼女の手助けをしたに過ぎないのですが、御手洗さんの方はそれ以上を期待していたようですね。柳川さんとの関係が壊れて、次の相手を探していたのかもしれません」

「次、って……」


そんな軽々しい気持ちだったのだろうか。
彼女の挑戦的な目から考えてそうは思えず、その点だけは納得はいかなかった。御手洗さんと柳川さんの付き合いの深さが私ではうかがい知れないけれど、やっぱり幼馴染以上の感情を葛城さんに持っていたとしか思えない。


だから柳川さんも、逆恨みしてあそこまで逆上したのじゃないだろうか。


「……葛城さんは、御手洗さんに手を貸したことを私が気にすると思ったから、隠してたんでしょうか」
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