艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
だとしたら、少し悲しい。
もちろん気にならないと言えば嘘になるけれど、ちゃんと話して欲しかった。まだ処置中のランプの付く扉を見上げてそう言うと、安達さんは少しの沈黙のあと「いいえ」と頭を振った。
「社長には、確かにあなたに知られないようにしていたことが、あります」
「え?」
「おそらく今後も、話そうとはしないと思います」
「……何を、ですか?」
聞いてもいいのだろうか。葛城さんが話そうとしないことを、秘書のこの人から聞き出すのは迷惑になるだろうか。
そう思ったが、聞かずにはいられなかった。