艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「そうやって店を守ってきた時代の人だからでしょう。考え方の違いでそれが孫の幸せに繋がると信じているのだろうと葛城は言っていましたが。どこに出しても恥ずかしくない娘に育てた、自慢の孫だと誇らしげでしたしね」


いつも、藍ちゃんは素直でいい子だと言ってくれた。
祖母との思い出が頭に浮かぶ。


確かに、ショックだった。
祖母に悪気はなかったとしても、知らずにどこかへ嫁がされていたかもしれないと思うと、裏切られた思いもある。


だけど。
……これが、葛城さんの、隠し事。


そういうことだ、と気が付けば、衝撃に代わってひたひたと胸を満たす温かい感情がある。
涙がまた零れ出し、両手で顔を覆った。


「祖母を育ての母と慕っているあなたの耳にいれたくなかった。だから、全部口止めして強引に買収し、葛城から仕掛けたように見せたんです。それが葛城社長の隠し事です」

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