艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
私はてのひらでころがされていたわけではない。
彼の手で、私が傷つかないように包まれて守られていたのだ。
今、私の胸を満たしているのは、ただひたすら、葛城さんの優しさだけだった。
「私からお話したのは独断ですが……この話を聞いたことにするかどうかは、奥様にお任せします。それと、こちら……社長の代理でお邪魔していたのですが、戻ってきたらあの騒ぎで驚きました」
かさ、と安達さんが私の側に置いた小さな紙袋に目を落とす。
花月庵のものだ。
「社長が目を覚まされましたら、聞いてみてください。こればっかりは私の口から言うと一生恨まれそうです」
「なん、ですか?」
「社長は案外、乙女趣味でロマンチストです」
その時、処置中のランプがようやく消えて、扉が開いた。