艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~


「あんまり泣くと、明日目が腫れるよ」


困ったように眉尻を下げる彼に、これ以上気を使わせてはいけないと思うのだけど、中々涙が引っ込んでくれない。
ぐ、と下唇を噛んで目頭に力を入れた。
さっき安達さんにもらった花月庵の紙袋を葛城さんの目に入るように掲げて見せる。


「……そうだ、これ。安達さんが花月庵から預かってきたって」


すると、「あぁ」と彼がひどく嬉しそうに表情を綻ばせた。


「あ、起きたらだめですっ!」

「大丈夫、こっち貸して」


紙袋をベッドの上に置き、身体を起こそうとする彼の背中に急いで手を添える。
紙袋の中には四角い化粧箱が入っていて、彼は丁寧にそれを取り出した。

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