艶恋婚～御曹司と政略結婚いたします～

彼が電話で話していたのは、このことだったのだ。
何もかもが、杞憂だった。


呆然と彼を見れば、目を細め嬉しそうに箱の中を見つめている。
この優しい綺麗な横顔を、なぜ私は疑ったのか、今となってはもうわからない。


「葛城と花月庵のコラボみたいでいいだろう？　葛城でも今、『花月』っていう名前で創作和菓子を作ってる。遊び心があって藍は喜ぶだろうと思って」


微笑みながら顔を上げた彼が、私を見てぎょっとした。


「藍？　いくらなんでも泣きすぎだろう」

「す、すきです。大好き」


今日一日でどれだけ泣くんだろう。せっかくの兄の力作が涙で滲んで見えなくて、両手で目を擦る。
声を上げて泣いてしまった。

心の中を、色んな感情が交錯してあふれ出す。


すきです。
無事でよかった。
疑ってごめんなさい。
守ってくれて嬉しかった。


ずっとずっと、守ってくれてた。


「愛してます」


縋り付いた私の肩に腕を回し、強く抱きしめてくれる。
もう二度と、この愛情を疑ったりしないと誓った。